健康意識の高まりから、定期的に歯科医院で歯のメンテナンスを行う人が増えています。また、美容目的で歯の矯正・ホワイトニングを行う人も増加傾向です。そのため、歯科医院の開業は競争は苛烈ですが、リピーターを増やせれば安定して稼ぐことが可能です。本記事では、そんな歯科医院の開業に必要な準備について詳しく解説します。
歯科医院開業に将来性はある？
歯科医院の数は一時増加傾向にありましたが、高齢化による廃業も増えており、近年は全体としてやや減少傾向にあります。ただし、人口に対する歯科医院数は微増しており、医科に比べても歯科診療所は依然多い状況です。
歯科医師の開業年齢に関しては、20代の開業者はほとんどおらず、40歳時点で39%、50歳では67%、60歳では78%と、40〜50代での開業が一般的です。これは、資金と技術の蓄積が影響していると考えられます。
また、今後は患者の歯科通院回数が増加すると予想されています。背景には「治療から予防へ」という意識の変化があり、国も「口腔の健康が身体全体に影響を与える」と発信しています。「8020運動」や歯科健診の推進により、定期的に歯科医院を訪れる「かかりつけ医」としての利用が拡大する見込みです。
さらに、矯正、ホワイトニング、インプラントなどの自費診療への関心も高まっており、単価の高い診療ニーズが増加しています。これらの要因により、歯科業界の競争が激しくなる中でも、開業の可能性は十分にあるといえます。
歯科の開業準備の流れ
歯科医院の開業にあたっては、計画から実際の開業まで段階を踏んで慎重に準備を進めることが重要です。
退職の準備
まず、勤務医として働いている場合は、開業の12〜24ヶ月前に勤務先を退職する準備を始めます。患者の引き継ぎを円滑に行うため、突然の退職は避け、少なくとも1年前には院長に開業の意思を伝えることがマナーです。
構想を練る
次に「どんな歯科医院を作りたいか」という構想を明確にすることが不可欠です。具体的には医院のコンセプト、開業エリア、内外装やロゴのデザイン、導入するシステム、資金計画、そして相談先の選定を行います。医院のコンセプトはターゲットとする患者像を明確にし、そのニーズや求めるものに基づいて設計します。
例えば、小児歯科ならば子どもが安心して通える雰囲気づくりが大切です。開業エリアはターゲットに合わせて選び、人口動態や周辺環境、建物の条件なども考慮に入れます。内外装はコンセプトに沿ったデザインを決め、システムは最近増えているクラウド型電子カルテの導入も検討されます。
資金面では開業資金の総額は約5,000万円が目安で、自己資金と融資のバランスを考慮しながら計画しましょう。また、必要に応じてコンサルタントなど専門家に相談することも有効です。
計画作成
構想が固まったら、開業の約10ヶ月前には具体的な計画作成に移ります。事業計画書を作成し、借入可能額の確認や物件の選定、内外装工事や医療機器の見積もりを行い、歯科医師会や厚生局への相談も進めます。
事業計画書には経営理念、ターゲット市場、競合分析、資金計画など詳細を盛り込みましょう。融資先は日本政策金融公庫や福祉医療機構、民間銀行など多様で、それぞれ条件や金利が異なります。物件選びでは開業コンセプトに合致し、融資枠内で納まる場所を慎重に選びましょう。
内外装工事は、クリニック専門の業者に依頼することが多いです。開業の半年前には物件、内外装業者、導入医療機器、融資元の金融機関を確定します。物件が決まらなければ工事も進まないため、この段階での確定は非常に重要です。
電子カルテなどのシステム導入も同時に検討し、特に資金節約を意識する場合はクラウド型が有力な選択肢となります。融資先も複数の候補から最も信頼できる金融機関を選び、長期的な関係を築くことを意識しましょう。
本格的な開業準備
開業の3〜4ヶ月前には内外装工事に着工し、消耗品の契約やスタッフ採用、ホームページやSNSの開設、内覧会の準備、大型機器の設置を進めます。消耗品は医院のコンセプトに合ったものを選び、スタッフの募集や研修も早めに行うことがスムーズな運営につながります。
内覧会は地域住民に医院を知ってもらうための大切なイベントであり、入念な計画が必要です。
内覧会・各種届出
開業の1ヶ月前にはスタッフの採用・研修を完了させ、内覧会を開催します。併せて保健所や厚生局への開設届出を行い、必要な各種許認可を取得します。
保健所による立入検査が実施されることもあり、医療法の遵守、医療安全管理、感染症対策、医療機器の管理、放射線安全、消防設備の整備など多方面のチェックをクリアしなければなりません。これらの一連の準備を経て、歯科医院は開業に至ります。
計画段階から法令遵守、資金管理、設備投資、スタッフ体制づくり、地域への周知といった各要素をバランスよく進めることで、安定した医院運営が可能です。とくに近年はデジタル化の波が強く、電子カルテやオンライン診療の導入が増加しているため、開業準備にあたってはこれらの最新技術の活用も重要なポイントです。
まとめ
歯科医院開業は、勤務医時代から計画的に準備を進めることが成功のカギです。開業コンセプトの明確化から資金計画、物件選定、内外装工事、医療機器導入、スタッフ採用、許認可取得まで、多岐にわたる工程を段階的に進めます。とくに患者層に合わせた医院づくりや、クラウド型電子カルテなどの最新技術の導入が重要です。地域との信頼関係構築や法令遵守にも注力し、周到な準備によって安定した運営と地域医療への貢献を実現しましょう。これらのポイントを押さえることで、成功する歯科医院開業が可能になります。
