
現在、日本では歯科医院が増えすぎたため、経営難に陥る医院も出ています。歯科医院が経営難になるのは、どんなところに原因があるのでしょうか。本記事ではその原因について解説し、経営難に陥らないための対策も紹介します。
歯科医院を取り巻く状況
現在、歯科医院は増加傾向にあり、厳しい競争が続いています。その中でも、ユニット数が少ない小規模医院は減収が続いています。歯科業界では、大型医院と小規模医院の間で明確な二極化が進んでいると指摘されています。
ユニット数の限られた小規模医院は、収益面でのプレッシャーが高まり、減収傾向にあるのが実情です。小規模医院が収益を増やすためには、他院との差別化やサービス品質の向上などの、新たな戦略が求められます。
経営困難に陥る歯科医院の特徴
経営困難に陥る歯科医院には、以下のような4つの特徴があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
院長が経営に必要なリソースを確保できていない
経営に行き詰まる歯科医院に見られる特徴として、院長が経営に必要なリソースを確保できていない状態が挙げられます。
通常、歯科医師は治療には長けていても、経営状況の把握は苦手というケースが目立ちます。しかし、経営に必要なリソースが十分でないと、医院の現状もわからず危うい状態が続くことになります。
集患できていない
歯科医院は競争が厳しくなっており、経営を安定させるには集患対策が不可欠です。歯科業界内での競争は確実に激化しているため、適切なプロモーションや広告の重要性が浮き彫りになっています。
集患に投資せずに経営を続けることは新規患者の獲得を遅らせ、結果として経営が厳しくなるリスクが増します。
スタッフの離職率が高い
歯科医院の経営難は、離職率の高さにも起因しています。離職率が高いのは、給与や長時間労働に対する不満を抱えているスタッフが多いことが挙げられます。こうした職場環境や待遇の改善には、業務の効率化や手当の見直しを行い、長期雇用に繋がる工夫が重要です。
人件費の割合が高い
歯科医療には、優れた技術と知識を持つ人材が求められ、そのために高水準の給与が必要です。そのため、経費の管理が適切でない場合には、経営に大きな負担がかかります。特に、スタッフの過剰雇用や無駄な残業、効率の悪いシフトの管理が問題視されます。
経営者は人件費を最適化し、スタッフの効率的な研修およびスキル向上に投資し、高品質な治療を提供して歯科医院の価値を上げる努力が必要です。
集患対策は開業してからでは遅い
上記に挙げた「経営困難に陥る歯科医院の4つの特徴」の中で、開業前に行う必要があるのが集患対策です。開業する前に、まず開業するエリアを選定しますが、どんな地域に開業するかによって、集患対策大きく変わる場合があります。
歯科医院を開業する際は、以下のような観点から開業エリアを選びましょう。
開業エリア選びのポイント
歯科医院の場合、多くのケースで「地域密着の患者」が主なターゲットになります。施術が必要な場合が多いため、遠方からの患者を受け入れることは稀です。したがって「開業場所」は集患において重要な要素となります。まず、以下の観点を考慮しながら開業地点を選ぶことが重要です。
・今後の人口の変動はどうなるか
・開発計画はあるか
・郊外型か都市型か
・1階か2階以上か
最初に人口の変動を見てみましょう。「ビジネス街」や「居住区域」がエリア内にある場合は、安定して一定の患者が利用する可能性が高いと見ていいでしょう。ただし、将来的に安定して集客するためには「その人口動向が今後5~10年でどう変化するか」をしっかりと調査する必要があります。
一例として、現在は活気あるショッピングセンター内に医院を構えたとしても、数年後にはショッピングセンターの人気が低下し、来客が減るかもしれません。また、逆に現時点では人口がそれほど多くなくても、駅前の活性化が進んでいれば将来的に人口が増加する可能性もあります。
人口構成要素を考慮する
人口を構成する要素についても、考慮に入れる必要があります。たとえば、高齢者が多数を占める地域では、訪問歯科へのニーズが高まります。また、高所得者が多ければ、自費診療を利用する可能性が高まるでしょう。
これらの診療メニューの存在によって、都市型と郊外型のどちらを選ぶかの決定が容易になります。このように、「安定して患者が訪れる見込みがあるか」「自院が提供する診療メニューと住民のニーズが合っているか」を検討した上での開業が基本となります。
患者はどのようにして歯科医院を探すのか
ここからは、開業後に実施すべき集客方法について解説します。そのためには「ターゲットとなる患者がどのように歯科医院を見つけるか」をまず考察します。かつては、患者は地域の歯医者の位置と名前をおぼろげに記憶し、虫歯などになれば訪れるという流れでした。
そのため「地域の歯医者」として、近隣の住民に認識されていました。しかし、スマホなどのデジタルデバイスの普及により、患者は事前に周囲の歯科医院に関する情報を調査するのが、当たり前になりました。
ところが、歯科医院の数は非常に多いため、患者にとって選択肢が広がる結果となっています。つまり、歯科医院から見ると、患者に選ばれにくい状況になっているのです。現在日本では口腔ケアへの意識が高まっています。
以前は、歯が痛くなってから治療するのが一般的でしたが、今では虫歯になる前に定期健診を受けて、予防する人が増えています。そのため、今後は歯科医院への通院回数が増加し、患者は「かかりつけ医選び」にさらに慎重になると考えられます。
昔は「腕がいい」と評判の医者に患者が集まりましたが、今はそれだけでは十分とは言えないのです。
歯科医院の現状を変えるには
これまでに述べてきた、歯科医院が抱える状況を改善するには、以下のような方法が有効です。
人の力を借りる
歯科医院の運営にはさまざまな業務があり、それを一人で全て担当するのは非常に困難です。たとえば、常勤医を採用して診療を分担したり、経営コンサルタントに助言を求めることも必要でしょう。
しかし、外部の支援を得るにはコストがかかるため、経営者として必要な支出と収益のバランスを常に考慮し、適切な判断を行うことが求められます。
集客施策を実施する
日本中に過剰なほどの歯科医院があるので、多くの歯科医院の経営はあまりよくありません。この状況を改善するには、効果的な広報活動を行う必要があります。広報活動は多様であり、新聞広告、ウェブサイトやブログの管理、地域イベントへの参加、さらにはメディア出演やSNSを通しての情報提供などがあります。
これらの活動は、医療が対象とする地域のニーズに沿った適切なメッセージを送信することが重要です。広告する際は、医療広告ガイドラインを遵守する内容でなければなりません。
たとえば、説明なしでの術前・術後の写真掲載や他の医療機関や医師との比較は規制されているので、医療広告ガイドラインに事前に目を通しておく必要があります。
スタッフを育成する
歯科医院の経営を成功させるには、スタッフの育成と特定の個人に依存しない組織の形成が不可欠です。患者に最高水準のサービスを提供するには、医院内の各ポジションで高いパフォーマンスが要求されます。
そのためには、各スタッフが自身の役割を理解し、専門性を向上させることが求められます。また、スタッフのモチベーションを維持することは、経営の成功に欠かせない要素です。
ツールを導入して効率をアップさせる
歯科医院の経営において、診療や事務の効率化は重要なテーマです。現代のIT技術を利用することで、これらの業務の効率が劇的に向上します。具体的には、電子カルテシステムの導入により、患者情報の正確な管理と迅速なアクセスが実現します。
これによって、診療時間の短縮やカルテ作成時間の削減、ミスの軽減が可能です。さらに、会計や在庫管理などのバックオフィス業務においても、適切なソフトウェアを導入すれば、時間とコストの節約が見込まれます。
自費診療の比率を引き上げて収益アップ
歯科医院の経営を安定させ、成長させるためには、自費診療の比率を引き上げ、収益構造を向上させる必要があります。自費診療の比率が増えれば、医院の経済の基盤を強固にできます。
歯科医院の経営を成功させるには、医院の現状を精密に分析し、自費診療に適した患者層を開拓し、それに見合った施術内容を取り入れることが大切です。
経営計画書や事業計画書を作成する
歯科医院の安定経営のために必要なのは、経営計画書や事業計画書を作成し実行することです。これらの文書は、目標設定と具体的な行動計画を鮮明にし、事業の方向性を決定するための指針となります。